2018年2月22日木曜日

帝銀事件②

警察は旧731部隊の関係者を帝銀事件の被疑者と判断します。

通称731部隊、関東軍防疫給水部は満州国で細菌の研究、人体実験をしていたと言われております。マルタと言われる捕虜とか犯罪者を使い、彼らを実験台にしていた。その責任者の石井四郎中将は本来ならナチスドイツの戦犯と同じく東京裁判で裁かれてもおかしくない人物。しかし、石井四郎をはじめ、誰一人旧731部隊の関連の人間は裁かれておりません。

一説では石井中将は米国と取引をし、米国に実験資料等を提出する代わりに無罪放免になったと言われております。司法取引が当たり前の国、米国なら大いにあり得ます。
意外と日本人に知られていないのは米国の刑事事件で無実を争うには珍しいことです。ほとんどの被告が司法取引に応じ、罪を認める代わりに刑期を短くしてもらう。従って米国の法廷は有罪か無罪かを争う場であり、日本みたいに刑罰が重い、軽いを争うことはない。

日本の警視庁もそのため上からの圧力がかかり、731部隊関係者の調査はできなくなります。 しかし、世間はこの凶悪犯罪を許さない。犯人を別に見つけるしかないのです。

そこで浮上するのがテンペラ画家の平沢貞通です。彼は当時かなりの地位を築いていた人物。普通ならこのような高名な人物が容疑者として浮上することはない。例えるのなら売れていない無名の芸人が強盗殺人で捕まるのではなく、世間にも知れたベテラン芸人が逮捕されるイメージです。

平沢さんが浮上する原因は帝銀事件当日に使われた名刺の持ち主、松井博士と名刺交換をしていたこともあるが、その名刺を財布ごとスリに遭い、紛失していたこと(しかもちゃんと警察に届け済み)。以前に銀行相手の詐欺事件を起こしていたことと出所不明の大金を持っていたこと。 この大金は副業の春画を販売で得たお金とも言われておりますが、彼のテンペラ画家のプライドから言いたくなかったのでしょう。

しかし、以前に書いた通り、帝銀事件は一般的な銀行強盗ではありません。毒殺による強盗殺人事件であり、一介の画家の平沢さんにそんな薬品の知識があるとは思えません。そして前にも書いた通り、犯罪者には暴力を以って実行するタイプと知能を使って実行するタイプに分けられ、平沢さんはどう見ても後者です。彼が偽装や偽札で捕まったのなら理解できるが強盗殺人のタイプではない。帝銀事件は相手を騙すという行為が知能犯ですが、実際には何人も躊躇なく殺しているという無慈悲な犯人です。

しかし、平沢貞通は逮捕され、判決では死刑が確定。平沢ではないのなら誰が真犯人なの?という世論を封じ込めたかったのでしょう。だが、歴代の法務大臣は誰一人平沢さんへの死刑執行のハンコを押さない。それはそうでしょう、どう見ても冤罪なんですから。多分、警視庁も検察庁も裁判所も法務省も全員平沢は実はシロと判断しており、誰一人法務大臣に「平沢さんはどうしますか?」を言わないし、執行を求める書類を見せなかったのでしょう。そんな書類も用意もされていないでしょうね。

平沢さんは不幸にも39年間刑務所で過ごし、95歳で医療刑務所で亡くなる。
私の持論では冤罪で捕まった人は長生きする、です。

この事件で非常に残念だったのが帝銀事件の前に似たような事件が二度もあったこと。普通なら警戒するのだがこの当時、赤痢や伝染病が怖いうえ、戦後の混乱期。今の時代では防犯カメラもあるし、もう二度とこういう犯罪は起こらないでしょう。

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明けましておめでとうございます

遅くなりましたが明けましておめでとうございます。 本年も宜しくお願いします。 昨年の12月13日から1月13日まで日本に一時帰国しておりました。 今回は帰省と仕事の両方でしたがあっという間の1か月でした。  今回のポイントは初の種子島訪問でした。